モーション記述システムの開発
第1回

平成8年6月20日

長島幸司

1.目的
 近年、コンピュータの世界では3DCGへの関心が高まっており、ゲームやネットワークの分野への利用は目覚ましいものがある。
 特に、ネットワークではVRMLという規格が固まりつつあり、この世界では、文字、画像、音声などのデータと共に、動き(Motion)のデータが重要になると思われる。  しかしながら、既存のシステムはXYZの座標系と三面図にしばられたものが多く、3DCGに馴染みのない初心者にとってはわかりにくいものだった。
 また、最近ではモーションキャプチャという手法がよく用いられているが、大規模なハードウェアを必要とするため、とても個人で扱えられるようなものではない。
 よって本研究では、人体モデルのモーション記述システムの開発と共に、初心者にもわかりやすい3DCGソフトのインターフェイスの研究をする。

※VRML(Virtual Reality Modeling Language)
 WWW上に、3次元で構成された1つの新しい空間(ホームスペース)を創る規格。現在、動き(Motion)も記述出来るVRML2.0のドラフト(草案)が発表されている。

2.概要
 本研究では人体モデルを左図のように、15のオブジェクトと14の関節に分けて考える。
 各関接は特有の情報を持ち、可動範囲が制限されている。
 またインバースキネマティクスを用い、個々のオブジェクトの動きが派生していくような構造になっている。
 実際には、単純なポリゴンモデルを用いる。

 システムの機能を大まかに説明すると、次の通り。
○エディットモード
 人体モデルを好きな視点から、自由に見ることが出来る。任意のオブジェクトをドラッグしながら動かし、姿勢をデザインする。

 エディットモードで指定したフレームとフレームの間の姿勢を、計算で導き出す。3次元位置の補完は、NURBS曲線を用いる。また、等速運動だけではなく、スピードの変化の付いた動きも実現出来る。

○ビューモード
 計算した姿勢にそってレンダリングを行いアニメーションを見る。視点は、自由に動かすことが出来る。

○データ入出力モード
 独自のデータ形式によって、ロード、セーブを行う。
 VRML2.0のデータも出力出来るようにする予定である。

 なお、実装については、VisualC++とOpenGLを使用する予定である。

※インバースキネマティクス(Inverse Kinematics)
 関節の動きが伝搬していく運動モデル。逆運動学とも呼ばれる。

※NURBS(non uniform rational B-Spline)曲線
 有理ベジエ曲線とBスプライン曲線の性質をあわせもつ曲線である。

※OpenGL
 多様なプラットホーム上で高画質な3DCGを実現する事を目的に開発されたグラフィックライブラリ。API群として供給されている。

3.今後の課題
 インバースキネマティクス、NURBS曲線、についての理解が足りないため、これらについての具体的なアルゴリズムを勉強する。
 VRML2.0の規格が完全に固まるかどうかを見極め、実装に耐え得るものであれば利用する。
 現時点ではポリゴンモデルの選択は出来ないが、細かくモデリングされたデータにも対応出来るようにしたい。